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団体紹介記事

地域新電力で、魅力ある東松島をめざす

東松島みらいとし機構

宮城県東松島市。

宮城県東部に位置し、仙台市と石巻市という宮城県の二大商業圏の間に位置する郊外型都市。豊かな自然環境でありながら、大型スーパーや病院など、暮らしに必要なサービスが充実している、住みやすいまちです。

松島湾と260余りの島々から成る、日本三景のうちの一つとして知られる「松島」の東端、「奥松島」を抱え、風光明媚な観光地としての一面も併せ持っています。

この辺りと言えば、2011年3月11日に三陸沖を震源地として発生した東日本大震災により、大きな被害を受けた地域。

マグニチュード9.0、宮城県北部の栗原市で最大震度7を観測し、地震に伴う大津波や火災などによる死者は全国で2万人弱。宮城県における被害はそのおよそ半数を占めています。

東松島においては、人口4万人強のところ、死者が千人を超えました。また、住宅被害は全壊・半壊合わせて1万棟を超えるという状況でした。そんな東松島で震災復興と持続可能なまちづくりに取り組むのが、「一般社団法人東松島みらいとし機構(略称:「HOPE」)です。

今回は、そんなHOPEで働く2人の若手社員、高橋さんと佐々木さんに、仕事の魅力ややりがいについてお話を伺いました。

△HOPEの職場風景

東日本大震災からの歩み

―HOPEは、東日本大震災の翌年、2012年10月に設立されたのですね。震災復興と持続可能なまちづくりに向けて、どのような取り組みを行って来られたのですか?

高橋:

この地域では、地震や津波に伴う家屋の浸水や倒壊、電気・ガス・上下水道等のライフライン断絶など、大きな被害を受けました。

震災の教訓を踏まえ、東松島市は防災・減災都市を実現するため、2011年12月に「東松島市復興まちづくり計画」を策定します。その中で、とりわけ緊急性・重要性が高い施策や、将来に向け持続的に発展するまちをつくるための施策が「リーディングプロジェクト」として位置付けられ、それらの事業化を促進するための中間支援組織として、東松島市、社会福祉協議会、商工会の三者によりHOPEが設立されました。

設立当初は「集中復興期間」として、既存産業の持続・再生を中心に、刺繍をまちの新産業にする「東松島ステッチガールズ」事業や、JICA(ジャイカ)と連携した、2004年にスマトラ島沖地震により津波被害を受けたインドネシアのバンダ・アチェ市との相互復興プログラムなど、復興に向けた様々な事業を手掛けてきました。

2016年からは「復興・創生期間」と位置づけ、市の事業の実行部隊として、市営住宅やパークゴルフ場の管理、ふるさと納税の窓口業務を担うほか、定住促進を目的とした婚活イベントなどの独自事業も展開しています。また同年4月からの電力自由化に伴い、宮城県内の自治体では第1号となる地域新電力事業に参入しました。「HOPEのでんき」として、地元資源を活用した地元生まれの電気を、公共施設や事業者に供給しています。

2018年には、SDGsの達成に向けて先進的な取り組みを進める自治体として政府が選定する「SDGs未来都市」に東松島市が選ばれました。環境にやさしく災害に強いまちづくりをすすめる「スマート防災エコタウン」プロジェクトに、HOPEは立ち上げから参画し、現在は同タウンのマネジメントシステム構築及び管理業務を担っています。

「HOPEのでんき」でめざす、魅力あるまちづくり

―お二人とも、地域エネルギー事業部に所属され、地域新電力に関わるお仕事をされているのですね。

最初に、高橋さんが入社されたきっかけと、現在担当されているお仕事の内容について教えてください。

高橋:

私は東松島市で生まれ育ち、高校まで宮城県内で進学しました。その後、東京の大学に進学し、卒業後は大手蓄電池メーカーに就職しました。

京都で勤務していたのですが、自分の将来を考える中で、やはり地元に根付き、これまでのキャリアを生かしながら地域のために貢献していきたいと思うようになったんです。地元での農業にも関心を持つようになり、東松島で持続可能なまちづくりをめざすHOPEと縁ができたことで、地元にUターンし、入社することを決めました。

市の事業の実行役として立ち上がった一般社団法人という組織体であるHOPEが、小売電気事業者として地域エネルギー事業の実施主体となっていることは、全国的にも類を見ないHOPEの特徴だと思っています。地域外に流出しているエネルギー、経済、人を地域内で循環させ、事業利益を地域の課題解決、地域活性化に再配分することで、さらに公益性の高い地域活性化の取り組みを実現する「公益型エネルギーサービス」となることを目指しています。

私はカスタマーサービスチームのリーダーをしており、市役所や市内民間事業者など、電力供給先のお客様を訪問して、説明や提案を行うことが多いです。

中でも電気料金の仕組みはやや複雑で、これをお客様にわかりやすく伝えることに難しさを感じています。ですが、大手電力会社とは違い、地域新電力だからこそ顔の見える関係性を大切にし、お客様への説明を丁寧に行うことを心掛けています。その結果、お客様から「分かりやすい説明で良かったよ」と声をかけていただけた時は、非常にやりがいを感じる瞬間です。

今後は、切り替えてくれたお客様が「HOPEのでんきにしてよかった」と言ってもらえるような、いわゆるファンづくりについても力を入れていきたいと考えています。

―大企業で勤務された経験がある高橋さんだからこそ、大手ではできない、お客様一人一人への丁寧な対応やフットワークの軽さを大切にし、お客様に喜ばれているのでしょうね。

次に、佐々木さんの入社のきっかけと、現在担当されているお仕事の内容について教えてください。

佐々木:

秋田県出身の私は元々保育士として働いていましたが、そのうちに、全く違う仕事をしてみたい、違う環境で働いてみたいと思うようになりました。

それらが叶う仕事を探していたところ、HOPEでの需給管理業務の求人が目に留まりました。電力の需要と供給を一致させる業務と聞いて、素直に「面白そう!」と感じ、転職を決めました。エネルギー・電気分野に関わるのは初めてで、見るもの聞くものすべてが新鮮に感じたのを覚えています。

私は、HOPEへの入社を機に東松島へ移住しました。星空が綺麗で、散歩が楽しく、食べ物が美味しいこのまちでの仕事と暮らしに、充実した日々を過ごしています。

仕事では、エネルギーマネジメントチームの需給管理ラインのリーダーをしています。

電気には、蓄電池がなければ貯めておくことができず、需要と供給が一致する「同時同量」でなければ安定供給ができないという特殊な性質があります。そのため私たち小売電力事業者は、需要量を正確に予測し、供給量の計画を立て、「同時同量」の達成を目指しています。その「計画値同時同量制度」の元で収益を最大化するために、 データ分析や原価低減を図る業務のことを、需給管理と呼んでいます。

需給管理を行う上では、30分単位で計画を作成し、電力広域的運営推進機関に提出するという欠かせない業務があります。需要量の予測の精度を高めるためには、電力供給先のスケジュールや天候の変化などを細やかに想定しておくことが大切です。予測した需要と供給とがぴったり合った時には、とてもやりがいを感じます。こうした需給管理の仕事に魅力を感じて、私の後に入社してきてくれた人もいるんですよ。

△需給管理業務の様子

―需給管理は、細やかで緊張感が伴うお仕事ですが、だからこその面白味もあるのですね。

若い世代の人に帰ってきてもらえる東松島に

高橋:

東松島には大学がないため、進学などで地元を離れる若い世代の人が多いのですが、将来的に「東松島で働きたいな」と帰ってきてもらえるようなまちにしていきたいです。

将来的に、HOPEのでんきの収益を地域活性化に向けた取り組みへ循環させていく仕組みづくりをすすめ、とりわけ子どもたちに還元していきたいと考えています。電気代が子どもたちのために活用され、東松島市やHOPEが自分のために良いことをしてくれたという印象が、子どもたちの心の中に残ってくれると嬉しいですね。

△子ども向けのイベントの様子

―ここで育った若い世代の人たちが、将来的にHOPEに入社して一緒に働けるようになると素敵ですよね。

HOPEの職場環境や雰囲気はいかがですか?

佐々木:

社内はコミュニケーションが活発で、気軽に相談がしやすく、人手が足りない時などは積極的に助け合う風潮があります。月に一度、「希望の食堂」という社内の食事会があり、別の部署の人たちとも関われる機会があって楽しいです。

日常的に色々な業務に携われるため、自分を生かせる業務に必ず出会える職場です。私も自分に合った仕事に出会い、自信を持てるようになりました。身近な人に、「生き生きしているね」と言われたこともあります。

今後は、チームのメンバーが欠けても臨機応変に対処できるような体制づくりや業務のマニュアル化をすすめ、新入社員が入ってきたら優しく対応して、入社して良かったと思ってもらえるようにしたいです。

△需給管理業務の様子

風通しが良く、若くしてリーダーとして活躍される職員の方がいらっしゃるHOPEでは、新しい社員の方も安心して楽しく仕事ができそうですね。

これからも、高橋さん・佐々木さんのHOPEのでんきを通じた魅力あるまちづくりへのチャレンジは続いていくことでしょう。

会社概要

会社名一般社団法人 東松島みらいとし機構         
所在地宮城県東松島市大曲字寺前61番地2
会社HPhttps://hm-hope.org/