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団体紹介記事

地域のエネルギーで目指す、「やまがた創生」

やまがた新電力

日本海に面し、日本百名山に数えられる山々に囲まれ、「母なる川」と呼ばれる最上川が流れる山形県。

きれいな水と空気、昼夜の寒暖差などの恵まれた自然を利用して、お米や果物、畜産の生産が盛んに行われています。

『株式会社やまがた新電力』は、山形の自然から生まれた電力を供給し、『やまがた創生』を目指している会社です。

その、やまがた新電力に2021年に入社した遠藤駿さん。

遠藤さんは元々、大手電力会社で発電所の運転員として勤務していましたが、地元である山形に根ざした仕事をしたいと、やまがた新電力へ転職されたのだそう。

同じ電力会社でも、今では全く違う仕事をしているという遠藤さんに、仕事の内容やその魅力について、お話を伺いました。

△遠藤駿さん

まず、やまがた新電力は、どのような経緯で設立された会社なのでしょうか?

「やまがた新電力は、2012年に策定された『山形県エネルギー戦略』を実現するために2015年9月に設立された会社です。

『山形県エネルギー戦略』とは、エネルギーの地産地消と供給基地化を実現することで、産業の振興・地域の活性化と、持続可能な社会の構築を目指すものです。

会社の設立には、山形県と地方銀行3行、民間企業18社が出資しています。自治体が出資する地域新電力会社の中でも、市町村単位でなく、県単位での設立は全国初です。

やまがた新電力は会社設立の翌年、2016年4月の電力小売り全面自由化と同時に、電力の供給を開始しました。

やまがた新電力は、県内の発電事業者からバイオマス・風力・太陽光などの再生可能エネルギーによる電力を買い取り、お客様に供給しています。

事業開始当初は、県有施設などの公共施設から供給を始めましたが、今では民間施設へも供給しています。」

 県の方針に沿った地域新電力会社の設立は、全国でも珍しい取り組みなのですね。

『やまがた創生』

やまがた新電力が目指す『やまがた創生』とは?

「『やまがた創生』とは、山形県が掲げる、山形版の地方創生ビジョンのことです。

地域資源を生かした雇用の創出や、安心と活力ある地域づくりを通じて『自然と文明が調和した理想郷山形』を目指しています。

地元の事業者が、県内の高いエネルギーポテンシャルを生かして再生可能エネルギーを発電、販売、使用する輪を広げる。そうすることでエネルギーの購入資金が地域内に循環し、地域経済の活性化、産業振興を図ることができます。人々の暮らしに欠かせないエネルギーの面から持続可能な社会の構築を進め、県のビジョンを達成することが、やまがた新電力の役割だと考えています。」

やまがた新電力は、山形県と密接な連携を図りながら、二人三脚でエネルギー政策をすすめておられるのですね。

△やまがた新電力の社員の皆さん

脱炭素化への想いを形に―100%CO2フリー電力の導入

地元・山形で、地域にやさしいエネルギーの供給に取り組んでいる、やまがた新電力の遠藤さんですが、解決したい地域の課題や、目指す将来像とはどのようなものですか?

「元々山形県は雪国なのですが、近年では冬季の気温が暖かくなってきています。

夏場も、かつては全国最高気温を記録するくらい暑い地域ではあるのですが、熱中症の危険が上がる31℃を超える日数が明らかに多くなっています。

集中豪雨による土砂災害や河川の氾濫が多くなり、気候の変化に危機感を感じています。

温暖化を少しでも食い止めるため、やまがた新電力の取り組みを通じて、少しでもCO2の排出を減らしていきたいです。」

山形県でも、温暖化の影響は明らかに表れているのですね。

温暖化を食い止めるため、具体的に遠藤さんがやまがた新電力で取り組んでいることは何ですか?

「『やまがたCO2フリー電力』を開発し、2024年4月から提供を始めました。

『やまがたCO2フリー電力』は、県内から集めた再生可能エネルギー由来の電力を『100%CO2フリーの電力』として供給するものです。

契約している県施設、市町村施設、民間施設に供給しています。都道府県庁舎における100%CO2フリー電力の導入は、北海道・東北地方では初めてです。

この『やまがたCO2フリー電力』の供給は、山形県が2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指して宣言した『ゼロカーボンやまがた2050』を見据えた取り組みにもなっています。

安定した価格でお客様に電気を使ってもらえるプランの提供を通じ、山形県に貢献できる会社にしていきたいです。」

△やまがた新電力のロゴが入った電気自動車

次世代に伝えたいこと

大手電力会社からやまがた新電力へ転職された遠藤さんですが、こうしてエネルギーの世界に入られたきっかけは何だったのですか?

 「私の父も祖父も、元々電力会社に勤めていました。父は火力発電所で勤務し、私たち家族も発電所の近くに住んでいたので、発電所は私にとって身近な存在でした。

発電所の運転管理業務は一日24時間絶え間なく行われる、体力的にも厳しい仕事です。父はその仕事を交代勤務で務めており、なかなか会えないことが寂しくもありました。

ですが、見えないところで地域の人々の暮らしを支える父を尊敬し、自分も同じ仕事をと思い、地元山形の高校を卒業後、大手の電力会社に入社しました。

その後、両親のいる山形に戻り、やまがた新電力へ転職した今は、企画立案や電源調達、需給管理、新料金プランの構築など、様々な仕事に携わっています。

需給管理業務では、インバランス(需要と供給のバランス)を最適化するための仕事をしています。

前職で発電所に勤務していた時は、需要と供給のバランスなど全く気にしたことがなく、可能なだけ発電すればいいじゃないかと無責任に思っていました。自分の知らないところで仕事をしてくれていた人がいたんだなと、今になって思います。

色々な立場の人が力を合わせて、エネルギーを支えているんだということは、次世代にも伝えていきたいですね。」

△自宅で仕事をする遠藤さん

遠藤さんが思う、やまがた新電力での仕事の魅力は何でしょうか?

「やまがた新電力へ入社してはじめて、自分が使っていた電気がどのような経緯で作られたものなのか、また電気代がどのような内訳になっているのかなど、電気のバックグランドについて考えるようになりました。

それらを知ることで、日常生活でも節電意識を持ったり、社会の動きによる電気代への影響など、今まで意識しなかったことも意識するようになりました。

電気の市場価格などの数字の動きを見られるのは、面白いですね。毎日、需要の予測と供給の計画をしますが、計画と実績がぴったり合ったときは、とても満足感を感じます。外してしまった時は残念ですけど・・・(笑)」

『やまがた創生』の実現に向けて

「まずは、山形県が推し進めている、脱炭素化に向けた取り組みを実行することが『やまがた創生』につながると考えています。

自治体レベルでは脱炭素に対して高い関心がありますが、民間レベルにはまだまだ浸透していないと感じます。

今後も地元企業などに対し、再生可能エネルギー由来の電気を使ってもらえるよう働きかけていきたい。

今はまだ、大きな変化を感じられる段階ではないですが、やまがた新電力の取り組みを通じて、地域に貢献したいです。」

△オフィスで仕事に取り組む遠藤さん

新しい視点を積極的に取り入れながら、社内体制の整備を図る遠藤さん。

電気の生産、仕入れから消費までを一通り経験されている遠藤さんが持つ、経験や幅広い視野は、これからもやまがた新電力の大きな推進力となることでしょう。

「山形は、脱炭素への意識が高い人が多い。これからもそうした事業者様とともに、山形の脱炭素化を推し進めていきたいです。」

そう語る遠藤さんの挑戦は、これからも続きます。

会社概要

会社名株式会社やまがた新電力
所在地山形市松波三丁目8番28号 松波プラザ2階D号室
会社HPhttps://ymgt-ps.jp/