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団体紹介記事

「循環のまち」臼杵で、頼られる“脱炭素化コーディネーター”に

うすきエネルギー

「臼杵においても、これから新しい脱炭素に向けた取り組みにどんどんチャレンジしていく必要があると思っています。地域の色々な会社さんに関わってもらい、協働しながら創り上げていきたいです。」

そう語るのは、穏やかながらも、ひとつひとつの言葉に芯の通った印象のある、小川拓哉さん。

うすきエネルギーの立ち上げに参画するため、東京から大分県臼杵市に移住してきて9年目。現在39歳の小川さんは、うすきエネルギー株式会社の取締役として、地域の脱炭素化に向けた取り組みの企画・立案や、行政、地元事業者等との渉外調整を中心に、日々マネージャーとしての役割をこなしておられます。 大手コンサルタント会社から、地域を舞台にした仕事に魅力を感じて転身されたという小川さんに、うすきエネルギーでの仕事についてお話を伺いました。

△小川拓哉さん

地域とともにある、うすきエネルギー

―うすきエネルギーのオフィスは、使われなくなった学校を活用されているそうですね。

「オフィスは、旧豊洋中学校跡の建物の中にあります。また、自社の発電所を置いている場所は、敷地内のグラウンドなんです。

時々、校舎周辺の草刈りや道路整備などを行っていると、地域の人から声をかけてもらえたり、「今度イベントで一緒に何かやろうよ」と誘ってもらえたりすることがあります。

私たちがここにいることを、ポジティブに捉えていただけているのかなと感じています。

仕事以外でも、どうすれば地域のために役に立てるかを考えながら、地域活動などにも主体的に取り組むようにしています。」

地域の方と一緒に汗をかきながら、できることに積極的に関わられてきたことで、地域での信頼を積み上げて来られているのでしょうね。

△うすきエネルギーのオフィス

△草刈り後の集合写真

臼杵の特色を生かしたバイオマス発電事業

―エネルギー事業では、どのような取り組みをされているのですか?

「臼杵市は、大分県の東海岸に位置し、臼杵湾に流れ込む臼杵川や末広川などの河川の源流があり、市内の森林等に降った雨が市民の生活用水、農業用水となり、それらが海に注がれる地形となっていて、同一自治体の中で水資源が「循環」しているという地理的な特徴があります。

臼杵市では、そうした地域の特色を生かし、排出される木質や食品廃棄物、下水汚泥、家畜排せつ物などからバイオマス原料を生産して、収集・運搬・製造・利用まで一貫されたシステムを構築することで、産業の創出と、環境にやさしく災害に強いまちづくりをめざす「臼杵市バイオマス産業都市構想」を掲げています。 循環型社会の実現に向けたこのまちの理想像に近づくため、バイオマス発電所の立ち上げから運営までを担っているのが、うすきエネルギーです。」

△バイオマス発電所

―まさに臼杵の地形や資源を生かしたオリジナルモデルなのですね。小川さんが感じている、バイオマス発電に取り組む意義や難しさは、どのような点にあるのでしょうか?

「元々私は林業や木材の活用が専門で、2021年6月からバイオマス発電所を稼働させました。地域エネルギー会社が自社で木質バイオマス発電所を運営しているケースは、国内では他に見当たりません。

正直、収益性の面では厳しいところがありますが、少しずつ知見が蓄積されつつあるので、脱炭素に向けてできることをやっていきたいという想いで、これからもチャレンジを続けていきたいです。」

△バイオマス発電に使用する木質チップ

「このバイオマス発電所は、環境教育の一環として、小中学生が見学に来ることもあります。また、外部からの視察依頼が来たり、今後、地域外の修学旅行生を受け入れる取り組みが企画されたりしています。

こうして外の人に来ていただいて説明をするのは楽しいし、何よりこの地域の特色を持った取り組みとして評価してもらえていることが嬉しいです。 地域の子どもたちをはじめ、少しでも多くの人が、自然エネルギーの大切さや、再生可能エネルギー普及に向けた取り組みの重要性、エネルギー自給率の現実を知って、エネルギーや電気について改めて考えたり行動を変えたりするきっかけになればいいなと思います。」

△環境教育の講師をしている様子

「環境・エネルギーと言えばうすきエネルギー」と言われる存在に

―小川さんの、これからの展望を教えてください。

「これからも、脱炭素に向けた取り組みにたくさんチャレンジしていきたいです。

自社が持っている資源と他社のアイデアなどを組み合わせて、まだこの世の中にない新しい取り組みをみんなで一緒に創り上げていけるというところがこの仕事の醍醐味であり、そのコーディネートをすることがうすきエネルギーの役割だと思っています。」

△地域電力について話す小川さん

海も山もあり、自然豊かで美味しい食べ物がたくさんある臼杵市。いつまでもこの地域の良さを守り続けたいというのが、小川さんの想いです。

「地域の中で『環境やエネルギーのことだったらうすきエネルギーだよね』『うすきエネルギーに相談すれば、良い提案をしてくれそう』と言ってもらえるような存在になって、臼杵市をはじめ周辺地域の脱炭素の取り組みを手掛けられるようになっていきたいですね。」

小川さんの脱炭素への挑戦は、これからも続いていくことでしょう。

△小川さんと、このまちで生まれた子どもたち

会社概要

会社名   うすきエネルギー株式会社
所在地大分県臼杵市臼杵622-3
会社HPhttp://usuki-energy.com/

この記事でご紹介したうすきエネルギー株式会社 小川拓哉さんのストーリーについて、詳しくは、2025年7月発刊の書籍「エネルギーで地域を元気にする仕事」(学芸出版社/編著:一般社団法人ローカルグッド創成支援機構)に掲載されています。ぜひ併せてご覧ください。