地域とともに、能勢・豊能のより良い未来を創る
能勢豊能まちづくり大阪府の最北端に位置する、豊能郡能勢町・豊能町。大阪府内とは思えないような、昔ながらの里山の風景が残るこの地域を拠点として、エネルギーを通じたまちづくりに取り組んでいる会社があります。その名も、「株式会社能勢・豊能まちづくり」。二酸化炭素を排出しない、環境にやさしい電気を供給し、その収益を活用して地域の課題解決や地域を良くする取組を行う団体の支援などに取組んでいる会社です。
この会社に、まちづくりがしたくて入社し、ゆかりのなかった能勢町に移住してきたという内田さん。そんな内田さんに、入社のきっかけや、やりがいを感じていることなどについてお話をお聞きしました。

△内田直希さん
「まちづくりがしたい!」そのきっかけ
―はじめに、内田さんがまちづくりに興味を持ったきっかけを教えてください
「私は横浜で育ち、大学は環境学が学べる東京の大学へ進学しました。高校生で進学先を考えた時、これから世界規模で取り組むべきこととして、環境問題が第一に浮かんできためです。
しかし、入学当初から1〜2年がコロナ禍にあたり、授業はほとんどがオンラインでした。学業や課外活動に制限がかかり、人とのつながりづくりを思うように進めることが難しい中で、ふとお台場にあるキャンパスの屋上庭園を訪れると、約600平方メートルの緑あふれる空間が広がっていました。開放的で、人工物と自然とが上手に調和するこの場所では、ハーブ・野菜畑や果樹園、コンポストなどの取組を通じて、持続可能な循環型社会の実現を目指す活動が行われていました。
多様な活動があり、みんなの「やりたい」が集まるこの場所に魅力と可能性を感じ、「自分はこういうことをやっていきたいんだ」と、強く思うようになりました。
こうして大学2年生から、この屋上庭園を拠点とした野菜の栽培や養蜂に取り組み、食料自給率や環境の問題に対応しながら、人の暮らしや自然を豊かにしていく方法を模索する活動を続けてきました。中でも養蜂ではプロジェクトリーダーを務め、学生が都会の真ん中で無添加・非加熱のはちみつづくりを行う取組が注目されて、出店販売や卸売りをするなど、地域資源を活かしたビジネスを体験することができました。
大学3年生の時に、持続可能な地域づくりを専門とする教授と出会い、まちづくりのための政策やSDGsについて、実践的な学びを得ることができました。カリキュラムの中で、京都府亀岡市や岡山県真庭市など、先進的な脱炭素まちづくりを行う自治体の事例を聞いたり、千葉県匝瑳市(そうさし)のソーラーシェアリングの視察に行ったりするうちに、「将来はまちづくりを仕事にしたい」という方向性が固まってきました。」
インターンシップを通じて、横浜から能勢へ
―学生生活での実践的な体験が、まちづくりの道への扉を開いたのですね。能勢・豊能まちづくりとの出会いは、どのような経緯だったのですか?
「大学3年生で、自分のやりたいことを自分で発掘して、インターンシップ(一定期間の就業体験)に行くことで単位認定されるというものがあり、SDGs・まちづくりに取り組む企業がないかと探していたところ、講師から紹介いただき、能勢・豊能まちづくりのことを知りました。ホームページに地域課題解決に向けたプロジェクトの取組が多数紹介されていて、とても魅力的に感じました。自分から連絡を取ってインターンシップ受け入れのお願いをしたところ、社内でも初めてのことのようでしたが、快く受け入れていただきました。」
―インターンシップ期間の中で、特に印象に残ったことはありますか?
「最も印象的だったのは、「能勢・豊能みらい会議」に参加したことです。このみらい会議では、地域住民の方や団体さんなどにご参加いただき、能勢・豊能まちづくりの取組をご紹介したり、参加者同士で地域の課題について話し合うワークショップなどを行っています。この時は第一回目の開催の時で、ワークショップでは社員も地域の方もまぜこぜになって、「これから能勢町・豊能町がより良くなっていくためにはどうすれば良いか」というテーマで意見を出し合いました。
こうして地域の皆さんと顔の見える関係性をつくり、温かい交流が生まれていたことと、地域の皆さんと一緒により良いまちの未来を作り上げていこうとする会社の姿勢がとても良いなという印象を持ちました。みらい会議も含めて6日間、能勢・豊能まちづくりの仕事を経験してみて、自分のやりたいことと合致していると感じましたし、地域で出会った人たちも良い方が多いと感じました。インターンシップを申し込んだ時は勇気が要りましたが、思い切って行動してみて良かったなと感じました。
インターンシップを終えた後は関東に戻り、以前のように学生生活を過ごしていましたが、社長とは継続的に連絡を取らせていただいていました。ある日、社長が東京に来られた時に一緒に食事をすることになり、その際に新卒での入社を提案していただきました。インターンシップでの経験が理想の仕事そのものだったので、迷いなく入社を決めました。


△能勢・豊能みらい会議の様子
―横浜から、これまでゆかりのなかった能勢町に移住された内田さんですが、能勢での暮らしはいかがですか?
「能勢は、空気がおいしくて、人が温かいところが良いなと感じます。地域の人たちからは、「若いのにこんなところに来て、すごいね」と声をかけていただいたり、中には、「仕事はどうだ?」「食事は取れているか?」と、私のことを息子や孫のように気にかけてくれる人もいます。だんだんと地域の中に溶け込めてきている感覚があり、嬉しく思っています。」
やりたいことがやれる楽しさ
―内田さんの日々の業務内容について教えてください
「能勢・豊能まちづくりには、社長も含めて計6名の社員がいます。その中で私は、主に電力の需給管理業務(電力の安定供給を目的として、需要と供給のバランスを取ること)と、交通課題の解消に向けた取組を担当しています。
2024年4月に入社し、間もなく受給管理業務に携わり始めましたが、最初は、季節や曜日、時間帯などによって変わる電力需要の予測や、それに基づく電力の調達などがとても難しいと感じていました。上司からは、「とにかくやってみて、経験を積むことが大切」と教えていただき、10か月ほど経った今となっては、受給管理業務の主担当として、おおむね自分の判断で一通りの対応ができるようになりました。予測がぴったり合った時は、「よし!」という気持ちになります。」
「能勢・豊能まちづくりが行う地域の交通課題解消の取組で象徴的なのは、EVトゥクトゥクの観光への活用です。能勢町・豊能町では、交通事業者の収益性の低下から、住民や観光客の足となるバス路線の撤退・鉄道の減便が進み、行楽地として親しまれる妙見山へ続く妙見の森ケーブル(能勢電鉄)も、2023年12月に営業を終了しました。今後、周辺の観光事業者への影響が懸念されています。
地域住民と交通課題の解消に向けたワークショップを重ねた中で、小回りが利き、移動中に里山ならではの風景を楽しめる乗り物として、東南アジアの街中や観光地で活用されている三輪自動車「トゥクトゥク」に着目しました。現在は実証実験中で、地域の方々へのヒアリングや調整を重ねながら進めています。」
―地域エネルギー会社がトゥクトゥクを使った交通課題解消に向けた取組を行っているのは、全国的に見ても珍しいように思えます。実証実験では、どのようなことを行っているのですか?
「トゥクトゥクを移動手段にしたツアーパッケージを複数作成し、運用しました。農業体験ができる民宿やマス釣り場、キャンプ場などの事業者と連携し、1泊2日の宿泊ツアーとして、能勢町・豊能町周辺ででできるレジャーを楽しんでいただきました。ツアーの参加者からは、「トゥクトゥクでの移動が楽しかった」「地域の魅力を知ることができた」といった好意的な意見もあった一方で、「後部座席に3人が乗るのは狭い」などの声もありました。今後は、地域の事業者との話し合いを重ねながら、より良い活用の方法について検討していきたいです。」


△トゥクトゥクを活用した実証実験
―地域の方々の意見を聞く機会を積極的に作られているのですね。
「交通をはじめとする地域課題の解決に向けた取組では、地域の人たちの意見を尊重しながら、一緒に創り上げていくことを大切にしています。地域の人との距離が近いことが、能勢・豊能まちづくりの良さだと思います。雑談なども大事にして、コミュニケーションを取る中で意見を聞き出すように心がけています。
地域のイベントに参加したり、農作業のお手伝いをすることもあります。田植えや稲刈りなどを手伝うと、とても感謝していただけるので、大きなやりがいを感じます。少年野球の指導者をしていた経験もあって、子どもと触れ合うことが大好きなので、子どもたちと遊ぶ担当にもなっています(笑)。」

△能勢・豊能まちづくりの社員の皆さん
―内田さんの社内での役割について、ご自身ではどのように考えていますか?
「私の役割は、受給管理業務などのルーティーンワークを着実にすすめながら、フットワーク軽く地域に出て、困りごとなどを聞いていくことだと思っています。
また、物怖じせずに自分の意見を言ったり、ある程度の裁量を持ちながらすすめて良いと社長からも言われているので、失敗を恐れずに挑戦することができています。社員の皆さんは、働きやすく、接しやすい職場づくりをしてくださっているので、ありがたいです。
周囲の人たちからは、「生き生きしているね」と言われます。自分のやりたいことができているからでしょうね。大学の同期の話を聞くと、都心部で就職した人が多く、仕事中心の生活になったり、すでに転職している同期もいますが、自分は恵まれているなと感じます。」
これからやっていきたいこと
―これからも守り続けたい地域の良さは、どんなところですか?
「第一に、自然豊かで美しい景観です。四季折々の素晴らしい里山の風景が残る地域なので、観光客の方にももっと訪れてもらいたいと思います。また、地域の人の温かさも魅力です。ここにきた人は、皆さん「人が良い」とおっしゃっています。
人口が減少していく中で様々な課題がありますが、まずは交通分野を発展させていきたいです。大阪の中心部から1時間で来られる場所なので、皆さんにリフレッシュしに来ていただけるような場所にしていきたいです。おすすめスポットは、「長谷の棚田」。日本の棚田100選にも選ばれている、とても綺麗な場所です。」
―内田さんの今後のビジョンを教えてください。
私たちは電力会社でありながら、まちづくりを目的とした会社であるという自覚を持ち続けるようにと、「能勢・豊能まちづくり」という社名が付いています。地域への貢献を続けることで、会社の認知度を上げていきたいです。「電力事業を通じて、地域にとって良いことを実現する会社」であるということを、地域の皆さんに知っていただきたいと思っています。
―これからエネルギー業界を目指す人にメッセージをお願いします。
「人と関わることが好き、人とのつながりを大切にしたいという人に、地域エネルギー会社は向いていると思います。地域での人間関係を大事にできるところが、この仕事の魅力です。
また、小さい組織だからこそ、自分の意見が生かされやすく、その分責任感を持って仕事に取り組めます。このような環境も、自身をより成長させてくれていると感じます。これからもフットワーク軽く、自分の意思で行動することを心がけていきたいです。」

△大阪の中でも寒い能勢町・豊能町

△地域で「エコ縁日」を出展
インタビューでは、まさに今、その目に地域の方の姿が写っているかのように、楽しそうにお話をされる内田さんの姿が印象的でした。地域に対する熱い想いを原動力に変えて、これからも能勢町・豊能町のために尽力され、地域やエネルギー業界の未来を担っていく存在になられるのではないかと感じました。
これからも、内田さんの朗らかさが皆さんを笑顔にし、地域を明るくしていくことでしょう。
会社概要
会社名 | 株式会社 能勢・豊能まちづくり |
所在地 | 大阪府豊能郡能勢町宿野437番1 |
会社HP | https://nose-toyono.com/ |