水力発電で、人と自然にやさしいエネルギーを鹿児島に
太陽ガス日本三大砂丘に数えられ、ウミガメが訪れる美しい吹上浜がある鹿児島県日置市。「この自然が豊かな環境を次世代の子どもたちに引き継いでいきたい」と、ここを拠点として再生可能エネルギー事業に取り組んでいる方がいらっしゃいます。
それが、太陽ガス株式会社で新エネルギー推進チームのチーム長を務める及川斉志さんです。
及川さんは、元々この地域には縁がなかったそうですが、留学先のドイツから帰国後、鹿児島県に移り住み、2012年5月の太陽ガスへの入社後、現在は主に水力発電事業に携わっておられるそう。
「ドイツから鹿児島へ」、そして「ガス会社で水力発電」と、興味深いエピソードをお持ちの及川さんに、お話をお聞きしました。

△及川斉志さん
ドイツから鹿児島へ
―はじめに、及川さんが環境やエネルギーに興味を持ったきっかけや、鹿児島へ移住された経緯を教えてください
「私は、宮城県で生まれ、愛知県岡崎市で育ちました。岡崎は、中心部は栄えていましたが、少し離れると田んぼが広がり、自然豊かな風景が続いているようなところでした。子どもの頃は、近所の林でクワガタを捕ったりして遊ぶのが好きでしたね。
高校卒業後に北海道の大学へ進学したのですが、度々実家に帰って来ると、地元の景色がだんだんと変わっていくのが気になりました。川は姿を変え、田畑は宅地に開発されたり、コンビニができたり、近所の山の木が伐採されたり・・・。子どもの頃から慣れ親しんだ風景が変わっていってしまうことに、虚しさを感じました。
そのことがきっかけで環境保護活動への関心が湧き、大学卒業後は国際環境NGO団体でボランティアをしていました。色々な活動に関わったのち、自分のやりたいことを見つめ直した結果、「環境先進国」と言われるドイツへ留学することを決めました。」
―ドイツではどのようなことを学んでいたのですか?
「語学学校でドイツ語を学んだのち、ドイツの大学で林業と自然保護について学んでいました。
私が留学していたドイツのフライブルグという街は、ドイツの中でも特に世界各国から注目を集める環境先進都市で、環境意識の高い人が多かったですね。
まちなかには緑が多く、古い建物と調和した美しい景観が保たれていて、時を越えて今に残るものを大事にしようとする景観に対する意識が、日本とは違うと感じました。古いものを長く残しながらまちづくりをするという感覚は、日本も見習うべきところだと思いました。」
―鹿児島へはどのようなきっかけで移住されることになったのですか?
「ドイツからの帰国後は、国内でエネルギーや自然保護に関わる職を探すことにしました。
ドイツで知り合った妻の就職先となった鹿児島と縁ができ、知人から日置市を拠点としてエネルギー事業を展開する太陽ガスの小平前社長を紹介していただいて、入社が決まりました。」

△太陽ガスの社員の皆さん
ガス会社で水力発電
―太陽ガスでは、ガス以外の事業も展開されているのですね
「太陽ガス株式会社は、1975年の創立以来、鹿児島西部地域を中心に、LPガスの供給販売、ガス器具販売、リフォーム事業を行ってきた、地域密着のガス会社です。
2012年に総合エネルギー会社への発展を見越して株式会社へ移行し、2016年の電力小売自由化を契機として、電気小売事業者への登録とともに電力事業部を立ち上げ、電力の供給販売、設備販売、電気工事事業を展開しています。 現在では、LPガス・電力を併せて2万件以上のお客様にサービスをお届けしています。」


△社員の皆さんのお仕事の様子
―発電の方法にはいくつか種類がありますが、太陽ガスが水力発電に取り組む理由は?
「太陽ガスは、持続可能な地域社会をめざし、再生可能エネルギーによるエネルギーの地産地消ができる電源の開発をすすめています。そのためには、出力が安定していて温室効果ガスをほとんど排出せず、発電設備の耐久性にも優れた水力発電が最も有効だと思っています。
今後も、鹿児島の地形を生かした小水力発電所のさらなる開発をすすめ、電気の供給量を増やしていきたいです。」


△及川さんが担当して建設した泊野川水力発電所(愛称:きらきら発電所)
小水力発電の面白さ
―及川さんの日々の業務内容について教えてください
「私は、太陽ガスも出資する、同じく日置を拠点として水力発電事業を行う「みずいろ電力株式会社」の代表取締役としての顔も持っています。
水力による発電や、発電所の運営管理を行うとともに、作った電気を太陽ガスなどに販売しており、最近では新しい水力発電所の開発に向けた調査などが業務の中心になってきています。発電所のメンテナンスや、開発の可能性のある河川などで水の流量を測定するために川へ入っていくこともありますよ。」

△及川さんの仕事場である泊野川
これからの目標
―及川さんのこれからの目標について教えてください
「この辺りの川は水がとても綺麗で、仕事以外でも家族で川遊びに来ることもあります。地域の豊かな環境を、未来に引き継いでいけることを願っています。
この地域でも、少子高齢化で人口が減少していく中、集落の維持や公共インフラの維持などの課題があるので、電力事業で得た収益を地域に還元して、貢献していけたらと考えています。事業収益から公園の管理費用を補助できないかなどの案もありますが、具体的な使い道や方法は、今後も地域の方と一緒に考えていきたいです。
そこに住む人たちから「発電所ができて良かったね」と言われるようになっていきたいですね。」

△発電所の見学者に施設の説明を行う様子
お話を伺う中で、及川さんの仕事や脱炭素化に対するひたむきな姿勢と熱意が伝わってきました。また、地域の人たちの顔を思い浮かべながら、「地域のために」という意識を持って仕事に臨まれている姿が印象的でした。
これからも、「人と自然にやさしいエネルギーで地域を良くする」及川さんの挑戦は、続いていくことでしょう。
会社概要
会社名 | 太陽ガス株式会社 |
所在地 | 鹿児島県日置市伊集院町徳重2丁目1番地4 |
会社HP | https://taiyo-gas.or.jp/ |
この記事でご紹介した太陽ガス株式会社 及川さんのストーリーについて、詳しくは、2025年7月発刊の書籍「エネルギーで地域を元気にする仕事」(学芸出版社/編著:一般社団法人ローカルグッド創成支援機構)に掲載されています。ぜひ併せてご覧ください。
URL:https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761529321/