地域新電力で、魅力ある東松島をめざす
東松島みらいとし機構宮城県東松島市。この辺りと言えば、2011年3月に発生した東日本大震災により、大きな被害を受けた地域。死者は千人を超え、住宅被害は全壊・半壊合わせて1万棟を超えました。
そんな東松島で震災復興と持続可能なまちづくりに取り組むのが、「一般社団法人東松島みらいとし機構(略称:「HOPE」)です。
今回は、HOPEで働く2人の若手リーダー、高橋さんと佐々木さんに、仕事の魅力ややりがいについてお話を伺いました。

△HOPEの職場風景
東日本大震災からの歩み
―HOPEは震災の翌年、2012年10月に設立されたのですね。これまでにどのような取り組みを行って来られたのでしょうか。
高橋:
「震災後、東松島市は、防災・減災都市を実現するため「復興まちづくり計画」を策定しました。その中で特に緊急性・重要性が高い施策や、持続可能なまちをつくるための施策を促進する中間支援組織として、HOPEが設立されました。
設立当初は、「集中復興期間」として、既存産業の持続・再生を中心に手掛けました。2016年からは「復興・創生期間」と位置づけ、市営住宅の管理やふるさと納税といった市の業務を担うほか、定住促進を目的とした独自事業も展開してきました。
同年4月からは、電力自由化に伴って地域新電力事業に参入しました。「HOPEのでんき」として、地域資源を活用した環境にやさしい電気の供給を行うほか、2018年には、東松島市が官民一体で推進する「スマート防災エコタウン」プロジェクトに参画し、同タウンのマネジメントシステム構築及び管理業務を担っています。地元生まれの再生可能エネルギーを活用して、災害に強いまちづくりに取り組んでいます。」
HOPEのでんきでめざす、魅力あるまちづくり
―お二人とも、地域エネルギー事業部に所属され、HOPEのでんきに関わるお仕事をされているのですね。
まず、高橋さんが入社されたきっかけと現在担当されているお仕事について教えてください。
高橋:
「私は東松島市で生まれ育ち、高校まで宮城県内で過ごした後、東京の大学に進学しました。卒業後は大手蓄電池メーカーに就職し、京都で勤務していたのですが、自分の将来を考える中で、やはり地元に根付き、これまでのキャリアを生かしながら地域のために貢献していきたいと思うようになったんです。そんな中、東松島で持続可能なまちづくりをめざすHOPEと縁ができたことで、地元にUターンして入社することを決めました。
現在は、カスタマーサービスチームのリーダーをしています。市役所や民間事業者など、電力供給先のお客様を訪問して説明や提案を行うことが多いのですが、中でも電気料金の仕組みは複雑で、これをわかりやすく伝えることに難しさを感じています。ですが、地域新電力だからこそ顔の見える関係性を強みとしながら、説明を丁寧に行うことを心掛けています。その結果、お客様から「分かりやすい説明で良かったよ」と声をかけていただけた時は、非常にやりがいを感じる瞬間です。」
―大企業での勤務経験がある高橋さんだからこそ、大手ではできない、お客様一人一人への親身な対応やフットワーク軽く行動することの大切さを感じていらっしゃるのでしょうね。
次に、佐々木さんの入社のきっかけと、現在担当されているお仕事の内容について教えてください。
佐々木:
「秋田県出身の私は、元々保育士として働いていましたが、違う仕事をしてみたい、違う環境で働いてみたいと思うようになったことをきっかけに仕事を探し始めたところ、HOPEでの需給管理業務の求人が目に留まりました。電力の需要と供給を一致させる業務と聞いて、素直に「面白そう!」と感じ、転職を決めました。入社当初は、エネルギー・電気分野に関わるのは初めてで、見るもの聞くものすべてが新鮮に感じたのを覚えています。
現在は、エネルギーマネジメントチームの需給管理ラインのリーダーをしています。
電気は蓄電池がなければ貯めておくことができないことから、その安定供給のためには、需要と供給が「同時同量」であることが大切です。そのため私たちは、日々需要量を正確に予測し、供給量の計画を立てて、収益の最大化を図っています。こうしたデータ分析や実需給の監視、状況に応じて計画の変更を行う業務のことを、需給管理と呼んでいます。
難しい仕事ではありますが、予測した需要と供給とがぴったり合った時には、とてもやりがいを感じます。こうした需給管理の仕事に魅力を感じて、私の後に入社してきてくれた人もいるんですよ。」

△需給管理業務の様子
―需給管理は、細やかで緊張感が伴うお仕事にように感じられましたが、だからこその面白味もあるのですね
若い世代の人に帰ってきてもらえる東松島に
高橋:
「東松島には大学がないため、進学などで地元を離れる若い世代の人が多いのですが、将来的に「東松島で働きたい」と帰ってきてもらえるようなまちにしていきたいです。
今後、HOPEのでんきの収益を地域活性化に向けた取り組みへ循環させていく仕組みづくりをすすめ、とりわけ子どもたちに還元していきたいと考えています。電気代の収益が子どもたちのために活用され、東松島市やHOPEが自分のために良いことをしてくれたという印象が、子どもたちの心の中に残ってくれると嬉しいですね。」

△子ども向けのイベントの様子
―地域の子どもたちがHOPEへの感謝や魅力を感じて、将来一緒に働けるようになると素敵ですね。
HOPEの職場環境や雰囲気はいかがですか?
佐々木:
「HOPEでは、コミュニケーションが活発で、それぞれの業務を横断的に助け合う風潮があります。こうして日常的に色々な業務に携われるため、自分を生かせる仕事に必ず出会える職場です。私もここで自分に合った仕事に出会い、自信を持てるようになりました。身近な人から「生き生きしているね」と言われたこともあります。
今後は、チームのメンバーが欠けても臨機応変に対処できるような体制づくりや業務のマニュアル化をすすめ、新入社員が入ってきたら優しく対応して、入社して良かったと思ってもらえるようにしたいです。」

△オフィスの様子
風通しが良く、若くしてリーダーとして活躍される職員の方がいらっしゃるHOPEでは、新しい社員の方も安心して仕事ができそうな印象を受けました。
これからも、高橋さん・佐々木さんを中心としてHOPEのでんきの取組がさらに広がり、魅力ある東松島へと発展していくことでしょう。
会社概要
会社名 | 一般社団法人 東松島みらいとし機構 |
所在地 | 宮城県東松島市大曲字寺前61番地2 |
会社HP | https://hm-hope.org/ |
この記事でご紹介した一般社団法人東松島みらいとし機構 高橋さん、佐々木さんのストーリーについて、詳しくは、2025年7月発刊の書籍「エネルギーで地域を元気にする仕事」(学芸出版社/編著:一般社団法人ローカルグッド創成支援機構)に掲載されています。ぜひ併せてご覧ください。
URL:https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761529321/